森おばけ(アルバム「一人じゃない」より)
目次
アルバム「一人じゃない」
それぞれの季節の雰囲気をまとった曲がある。
僕の未熟なレコーディング技術では
その空気感を表現できない。
ならば、その詩のイメージの空間へ行って、
マイクを立てて録音しよう。
四季折々の空間の響きと共に、
1枚のアルバムに収めてみよう。
この企画は2001年から、
3年かけて実現されました。
22年も前の作品ですね。
すべて一人で思いつき、
誰も巻き込まず、
完結させた
創作活動でした。
詳しくはこちらに書いています。
「蛍」について
蛍を初めて見たのは
20歳前後の頃、アルバイト雑誌で見つけた
松竹歌舞伎の全国ツアーのトラックの助手。
荷上げ荷下ろしをする仕事で、
生まれて初めていろんな土地へ行き、
出雲公演の中日、
自転車を借りて
夕暮れ時に散歩した日のことでした。
当時の横浜の街の暮らしからすれば、
日が暮れて真っ暗になる夜の8時は
深夜2時くらいの感覚でした。
「やばいな。怖いな。そろそろ帰らなくちゃな」
そう思いながら、田んぼ道を
明かりの見える「町」の方へと
自転車を向けました。
「うぉ!あぶねぇ」
と、蜘蛛の糸かなんかの
光の反射が、振り向きざまに
顔の近くに現れて、
とっさによけました。
その危機感とは裏腹に、
その光は、ゆうらゆうらと、
移動しながら舞い上がり、
空に溶けていきます。
まったくわけがわからず、
この奇怪な現象に怯えました。
逃げようと思った数秒後、
「もしかしてこれが、
小さな頃から噂に聞いていた
『蛍』なのではないか?」
と、記憶と理解が一致して、
あたりを眺めると、
田んぼの畦には
チカチカと点滅する平家蛍。
井手からは
大きく飛び交う源氏蛍。
圧巻の景色が広がっていました。
蛍は独りで見るべきです
それからは毎年、
6月くらいになると
「蛍」が見たいなぁ・・・
と思うようになりました。
「蛍」そのものを見たい。
というより、
あの、蛍が出るような場所と空気感が
たまらなく好きです。
「蛍の光」そのものが幻想的
というのではなく、
蛍の出る場所は、必ず清流が流れていて、
大体、人里からちょっと離れた、
「あっち」と「こっち」の狭間の暗闇で
生息して光っているからのように思います。
しかも、ちょっと気温の高い、
雨が降りそうな曇り空の夕暮れ時に。
このシチュエーションがたまりませんね!
独りがイイです。
独りぼっちがイイです。
去年、
みんなで「穴場があるから見に行こう!」
と、盛り上がったのですが、
待ち合わせ場所には誰もいなく、
一生懸命連絡とってみようと思ったのだけど、
途中でやめました。
そこらへんの心の機微は、
その翌日、noteに書いたので、
読んでみてください。
一言で言うなら、
やっぱり蛍は、
「みんなで見に行くレジャーではなく
独りでそこに立って、初めて現れるもの」を
感じることが醍醐味だと思っています。
この曲の思い出
この詩は、たぶん出雲で見た翌年くらいに
どこか田舎へバイクを走らせた時に、
蛍が出そうな場所で、
人気のない暗闇に踏み込んで
創ったんだと思います。
よく憶えていません。
でも、
その数年後、
「一人じゃない」のコンセプトが浮かんだとき、
「蛍と一緒に録音したいなぁ」
と思いました。
でも、蛍は鳴かないので、
蛍の音を録音することはできない。
でも、でも、
蛍の場所、そして、雨の降る前には、
必ずカエルが鳴いているね。
心配ない。
蛍が出る場所へ行こう。
そして、当時、東京のアパート暮らしの僕が
選んだ場所は、
房総の方にある、たしか・・・
山田町という場所。
なんか、テレビでチラッと見たんですよ。
「蛍の里」と呼ばれてるとか、
そんな場所があるとか聞いて。
夕暮れ時を目指して、
4〜5時間かかったかな?
なんとか山田町に着き、
その蛍スポットに着きました。
観光客がいる。と言っても、
ずいぶんと田舎だったので、
数えるほどでした。
また、
やっぱり僕は道を外れ、
奥の方、奥の方へ行くのです。
どんどん誰もいなくなり、
どんどん夕闇が迫ります。
そんな場所で録音しました。
好い思い出だなぁ〜
誰とも分かち合えない。
独りで感じたこの世界を、
こうして、音楽で分かち合えるって
最幸ですね♪
平魚泳の音楽への想い
「お誘い合わせの上、遊びに来てください」
とは、よく言うし、
それが集客の拡がりへつながる
ひとつの効果的な手段だとは思う。
僕も、そんな雰囲気の場では、
場に合わせ、それなりに楽しむ。
けど、出来れば、
「みんな」ではなく、
一人ひとりの「独り」で
響き会える音楽を
やっていきたいと
想っています。
“all”ではなく、”every”ってことだね♪
でも、他人がどう感じるかなんて、
コントロールできるもんじゃないし。
だから僕は、僕で、
出来るだけ、描きたい情景、風景を
音楽で、表現。
表に現していけるように
心身共に、
精進していく所存です。
2023年12月完成音源6曲「暮らし、暮れゆく暮らし」
寒い時こそ「暖かい」と感じる。
何度も日が暮れて
くりかえし暮らす
僕らの暮らしを描いた6曲です。
2023年2月完成音源6曲「なおゆきくん」
「なおゆき」平魚泳の本名。
私的で個人的な心の情景、
センシティヴな想いを
詩や語りで綴りました。
2022年6月完成音源6曲「気の持ちようで」
歌って現れる、
心を通して眺める「現実」。
そんな意識で紡いだ詩を
ウクレレの音色と共に。