新作の歌詞
レコーディング、マスタリング作業もほぼ終わり、
CDや、各ストリーミングサイト、noteなどへ
金曜日までにローンチしようと
今、6曲の歌詞を
書き、まとめて並べていました。
並べて読むと、
何度も歌ってきた私的な詩に、
胸がいっぱいになってしまいました。
こんな詩を歌うもんだから
こんな人生になってきたんだな。
先に歌詞だけ
並べようと想います。
想い重なる方へ
楽しみに待っていてくれたら嬉しいです。
目次
サラ サラ サラ
日は高く 僕は目を覚ます
差し込む日差しに心うばわれ
真っ暗で何も見えないのか
眩しくて何も見えないのか
太陽の熱でとけるわけもなく
相変わらずの靴紐を結び
最初から持ってなかったのか
最初からここにあったのか
ソラ タカク ウカブクモ
ユレル クサバナニ
サラ サラ サラ ナガレル
オガワ
あたらしいまま作りたての家
壁に泥を塗り怒られる
ツチの匂いを嗅ぎに故郷へ
自転車 揺れる蜃気楼
大丈夫 ここで待ってるよ
そこそこ勉強も出来て
誰とでもうまくやれて
芽生えた何かに氣がつかなかった
それでも取り繕うには充分
「成績」も良かったし
こなしていけるんじゃないかと
想った
だんだん何も分からなくなって
進路希望も分からなくて
氣がつけは受験会場に「みんな」といた
希望の「学校」へ行くために
必要な「科目」も分かってなくて
何も決めていない自分を
隠した
最初から受験する氣なんて
本当は無かったんだ
誰にも言い出せない氣持ちがあった
何も分からないままの真っ白な時間だった
嘘がバレる
焦る
崩れてく
「やりたいこと」が何なのか
うまく誰にも言えなかった
「違う そうじゃない…」
またボヤけてく
原発が遠くに見えて
誰かの花火の音がして
「教室」の向こうには
青空があって
夢を語り合うような「友達」が
一人もいなかった
そもそも語れるような夢を持つ「僕」
なんていなかった
それでも取り繕うには充分
「成績」も良かったし
こなしていけるんじゃないかと
想った
誰からも見放されたような気分だった
それなのにここから離れることが
出来ない
空っぽな僕にだけある
空っぽな「時」を
慰めにすることがもう
出来ない
最初から受験する氣なんて
本当は無かったんだ
誰にも言い出せない氣持ちがあった
何も分からないままの
真っ白な「時」を
もう二度と繰り返したくはない
誰にも言えない「確か」な
「氣持ち」があった
芽生えた「何か」に既に
氣付いていた
檻が外れ
敵が現れても
命で踊るんだ
大丈夫
ここで待ってるよ
おばあちゃんの思い出
高校3年生の冬
1月15日 祝日 成人の日
そしてあの日はたしか
センター試験の当日だったんだと思う
幼い時から
ずっと一緒に暮らしてきた
おばあちゃんが死んだ
進学も就職も
何も決めていなかった僕は
息を引き取った病院の近く、
冷たい北風の吹く砂浜に座って
「今頃みんな 受験がんばってんのかな・・」
なんてぼんやりと考えながら
青く晴れ渡って
ちょっとだけ春の気配のする
冷たく澄んだ空を眺めていた
防砂林の向こうでは
車の行き交う音
クラクションが響き渡り
向こう岸の工業地帯からは
相変わらず煙が立ち昇っている
いつもと同じような一日が
誰かにとって特別な日になることがある
ということを、初めて知った日だった
あれは小学校高学年くらいだったある日のこと
おばあちゃんが死んだ夢を見た
家族で食卓を囲んでいる
お父さん お母さん 弟
一人少ない静かな食卓だった
隣の暗い応接間にはおばあちゃんが居る
もう息を引き取って
二度と動くことのない
おばあちゃんが居る
そんな吸い込まれそうな暗い
隣の部屋の奥から
もう二度と動くことのないはずの
おばあちゃんが
おばけになって現れて
僕に話しかけてきた
僕はびっくりして
怖くて 恐ろしくなって
近づいてくる
おばあちゃんから
逃げた
「なおちゃん、起きなさい。朝ですよ」
元気なおばあちゃんの声で
夢から醒めた僕は
最初はひどく戸惑い 怯え、
それからだんだんと落ち着いて、
ほっと安心したのを憶えている
じつは
その後ずっと
こんな夢を見てしまったことに
後ろめたい気持ちを抱えていた
高校3年生の冬
あの日と同じその部屋で
本当におばあちゃんの亡骸を見つめている
あの日の夢を思い出して
「おばけでもいいから
もう一度おばあちゃんに会いたい。
おばあちゃんのおばけだったら
全然怖くないや」って
本気でそう思えたそのとき
初めて声を上げて泣いた
マメ
ぽっかりと空いた空の穴に
気をとられていたんだ
あの信号が赤に変わる前に
渡らなくちゃ
無数の足あとを残した
雪の上をとぼとぼ
誰ひとりいない広場
いったいみんなどこへ行ったの?
本当は泣き出してもよかったんだ
それでも平気な顔して歩いた
君に追いつきたかった
君にほめられたかったよ
誰ひとり僕に気付かなかった
それでも隣で笑って見てた
君は少し歩くのが早いね
あの信号が変わる前に
君に置いて行かれないように
僕は 僕はずっと頑張っていたんだよ
本当は泣き出してもよかったんだ
それでも平気な顔して歩いた
君に追いつきたかった
君にほめられたかったよ
君に覚えてほしかった
君と一緒にいたかった
きみへ
今 僕は君が見ていた
遠くって場所に来ているんだと思う
懐かしいな あの山の向こうの
空の下に行きたいと思ってた
今 僕は君が見ていた
遠くって場所に来ているんだと思う
懐かしいな あそこまで行けば
何かが変わるって思ってた
そこに来て
今君を見てる
声が届くかな
たしかにここに来たよ
今 僕は君が夢見た
未来って場所に来ているんだと思う
なんとなく こんなはずじゃなかった
ハズレたんじゃないかって
思うときもある
ここに来て
今君を見てる
たしかに届いてた
だからここに来たよ
それならば
この先の何処に
何があるのかは
知っているよね
ここからは
僕らで繋いでいくよ
今 僕は君と夢見た
未来って場所に向かってる
そこはきっとずっと
いつもここにある
何処かさ
まさおとお父さん
抱きしめる 抱きしめられたまさお
包み込む つつみこまれたまさお
包み込む 僕はお父さん
包まれた まさおはなおゆきだ
お父さんが今の僕くらいの時は
どんな夢に生きていたんだろう
今の僕とあまりに違うけど
今のまさおはあの日の僕なんだよ
働く大人のお父さん
働かない大人のお父さん
まるでどこかの誰かさんみたいだね
知らなくもない気持ちがここにある
抱きしめる 抱きしめられたまさお
包み込む 包み込まれたまさお
僕とお父さんは
もちろん違った生き方で
出会いも時代も感じる心も
違う別の生き物だ
これから生きていくまさお
こうして生きてきた僕は
まさおのように僕に包まれて
お父さんが僕と一緒に生きる
包まれた まさおに僕がいる
抱きしめる 僕に父がいる
目を閉じる 胸の奥の方で
拡がる宇宙に包まれて
包まれる…
包み込む…
抱きしめる…
抱きしめられる…
2023年12月完成音源6曲「暮らし、暮れゆく暮らし」
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2023年2月完成音源6曲「なおゆきくん」
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2022年6月完成音源6曲「気の持ちようで」
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