平魚泳 Hirasakana Oyogu

大丈夫 ここで待ってるよ②

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「最初から受験する気なんて
ホントはなかったんだ」

 

こんな、
若いので、ボキャブラリーが足りない。
だからこそ出てしまったような
本気の想いの言葉を綴ったのは、たしか・・
43歳頃に見た「夢」の出来事でした。

 

 

夢の風景

 

夢の中の僕は
10代の若者でした。

 

そして、
そんな「僕」より年上の
学生服を着た、生徒会長風の
七三にメガネ。
真面目、というより、
学生運動の時代に全共闘として戦って
「ナンセンス!」とか言って叫んでいるような
アツい学生風先輩に
河原で、木の上から
説教されていました。

 

 

それがこの「なおゆきくん」のジャケットの絵です。

 

夢で見た風景を、
寝起きでスケッチして、
そのまま早朝、
家を出て、人気のない運動公園で
描き留めた詩が
この曲でした。

 

 

そこそこ勉強も出来て
誰とでもうまくやれて
芽生えた何かに気がつかなかった
それでも取り繕うには充分
「成績」も良かったし
こなしていけるんじゃないかと
思った
 
だんだん何も分からなくなって
進路希望も分からなくて
気がつけは受験会場に「みんな」といた
希望の「学校」へ行くために
必要な「科目」も分かってなくて
何も決めていない自分を
隠した
 
最初から受験する気なんて
本当は無かったんだ
誰にも言い出せない気持ちがあった
何も分からないままの真っ白な時間だった
嘘がバレる
焦る
崩れてく
 
「やりたいこと」が何なのか
うまく誰にも言えなかった
「違う そうじゃない…」
またボヤけてく
原発が遠くに見えて
誰かの花火の音がして
「教室」の向こうには
青空があって
 
夢を語り合うような「友達」が
一人もいなかった
そもそも語れるような夢を持つ「僕」
なんていなかった
それでも取り繕うには充分
「成績」も良かったし
こなしていけるんじゃないかと
思った
 
誰からも見放されたような気分だった
それなのにここから離れることが
出来ない
空っぽな僕にだけある
空っぽな「時」を
慰めにすることがもう
出来ない
 
最初から受験する気なんて
本当は無かったんだ
誰にも言い出せない気持ちがあった
何も分からないままの
真っ白な「時」を
もう二度と繰り返したくはない
 
誰にも言えない「確か」な
「氣持ち」があった
芽生えた「何か」に既に
気付いていた
檻が外れ
敵が現れても
命で踊るんだ
 
大丈夫
ここで待ってるよ
 
 

言えなかった言葉

 
10代の若者が作った詩なら
荒削りながらも、奥深い完成と才能を
感じさせられますね。
 
でも、じっさい書いた人は
40歳を過ぎたおじさん・・・。
 
でも、でも!
・・・最後の歌詞は、
10代の若者では
絶対描けなかった
 
仮にそう想っていたとしても
歌うことは出来なかった。
 
大丈夫 ここで待ってるよ」。
 
 

誰に届けたいのか

 
あんなんだった僕が、
こんなんなって
今、ここにいる。
 
今の僕が
「君」に語りかけたい。
「大丈夫だよ」って。
 
だって
大丈夫だもん!
 
今、僕は「大丈夫」だから。
 
今、「大丈夫」と意志を持つ僕。
あの日の「君」のおかげで
今、こうして歌えている僕が、
あの日の「君」に
届けたい。
 
そして、
あの日の「僕」みたいな「君」が
今の時代にも、
仮に、もし、いるとしたなら、
届けたい。
 
「大丈夫」と。
 
「踊ろう♪」って。
 
 

懐古的に聴こえてほしい

 
そして反面、
ただのノスタルジックな情景描写に響く
だけの曲となり得る「時代」
であってほしいとも想う。
 
「こんなくだらない『受験』とかいう
権威に青春を振り回される若者がいる
時代もあったんだなぁ」って。
 
*************
 
「成績」とか「科目」とか「進路希望」とか
「みんな」とか、「やりたいこと」とか。
わざわざ「言語化」して、
カテゴライズして、言い訳して、
正当化して、
みずから呪縛を創る。
 
そんな「人類の時代」
そろそろ次のステージに進んでも
いいんじゃないかな・・・
 
なんてイメージも持ちつつ、
この詩を「墓標」としたく
創り、歌い、
今も生かそう
声を振り絞ってしまう「僕」です(笑)。

この記事を書いた人

平魚泳

ウクレレ弾いて、タイコ叩いて、笛を吹いて、歌う。詩人。音楽家。言葉の持つ力、音の持つ力を日々確かめています。

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